河合隼雄 物語とたましい(Standard Books)
鬼lab.
新品
1,540円(税込)
本の説明
ひとは内に秘めた苦悩をたやすく打ち明けたりはできないものですが、慰めきれない苦しみを誰にも告げられぬまま死んでいった亡霊たちは、ときに〈無告の鬼〉という存在になってしまいます。ひとの已みがたき〈魂〉を〈鬼〉と呼ぶとするなら、鬼たちのかなしみに巣食う〈憾み〉の情念を照出するものは、きっと〈鬼〉みずからの〈物語り〉それじたいによるほかないのでしょう。そしてそれは、比類なき〈聴き手〉であるケアラーたちの問い尋ね=弔い(弔いの古語「とぶらふ」の語源は問い尋ねること)によってこそ引き出されるものにちがいありません。その自己語りは、鎖された心に棲む〈内なる他者〉としての〈鬼〉の所在を明らかにします。ユング派の臨床心理学者・河合隼雄は、フロイトが見つめようとした「たましい(ゼーレ)」というものは、自分の中にある自分自身でもよく分からないもの、表現できないもののことだと説明しています。カウンセリングとは、心に〈鬼〉を飼う者が、その是非善悪さえよく分からないものと向き合うことができるように助ける、すぐれて霊性的な手法であると理解できる一冊です。(0号)