ミシンと金魚
日々織
新品
605円(税込)
本の説明
認知症を患った老女の内面の語りで紡がれる物語。
いわゆる台詞も「」では表現されず、主人公の内面である地の文で書かれいて、
私は最初すごく読みづらかったです。
しかしどうにか読み進めて、
昔はそう珍しくはなかったかもしれない壮絶な一生の、
やりきれなさや理不尽さの中に、
主人公と周りの人々の愛と後悔が光って見えてきた時、
何とも言えない感情が心の中に広がった。
ミシンの上糸と下糸について作中で触れられているのですが、
現在と回想が、最後にはリズミカルにスピードを上げて噛み合って……
まさにミシンの上糸と下糸のようでした。
ケアマネージャーとして働きながら執筆されたそうで、
歳を重ねた人々や関わる家族の、きれいごとではいられない感じがリアルです。
生きることは、ひどく醜くて汚くて、だからこそ人は愛おしい。
そのことが感じられた一冊です。
著者:永井 みみ『ミシンと金魚』(集英社文庫)